何のために、誰のために、こんなところで死ななければならないのか

《vol.1》 小島清文著『戦争と人間 守るべき国家とは何か 第四集』(昭和出版)より
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著者の小島清文さんは1919年(大正8年)、台湾・台北市生まれ。
太平洋戦争中は海軍兵科予備学生隊を経て、戦艦大和の暗号士として、レイテ沖海戦に従軍しました。
戦争末期にはフィリピン・ルソン島での戦闘に参加し、戦いの最前線に身を置きました。しかし1945年4月、ついにアメリカ軍への投降を決断。その後は、投降勧告のビラ制作など、終戦活動に従事しました。

戦後は戦争のない平和な世界を目指し、日本に民主主義を根付かせようと、1947年島根県にて「石見タイムズ」を創刊しました。
さらに、自身の体験記『投降』を書き記したほか、元兵士たちを中心とする「不戦兵士の会」や「戦争体験を掘り起こす会」などで活躍するなど反戦運動に身を捧げていましたが、晩年は病に伏し、2002年、82歳で亡くなりました。

朗読する場面はルソン島での出来事です。

ルソン島はアメリカ軍の攻撃がすさまじい激戦地でした。
そこで、小島さんはたった25人の生存者で編成された小隊の小隊長を命じられたのです。それから毎日、米軍の猛攻撃にさらされました。
やがて、撤退命令が出ましたが、そのころには小隊の全員がマラリアやデング熱などの病にかかっており、体力を消耗するだけでなく、食料も底をついていました。

そんな状況の中、小島さんたちはついに米軍に包囲されてしまいます。
米軍からは投降を呼びかけられましたが、なかなか投降できずにいました。
すると、部下の一人が「海に出て船を奪い、支那に行こう」と言ったのです。意を決した小島さんたちは、米軍の包囲網を突破します。

けれども、成功したのは小島さんと2人の部下だけでした。
こうして生き残った3人は海を目指し、ジャングルの中を歩き始めたのでした。

朗読は立教大学2年生で立教YMCAの秋山裕美さんです。

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